瀧口夕美
民族衣装を着なかったアイヌ
──北の女たちから伝えられたこと──
北海道の観光地、阿寒湖畔のアイヌ・コタンに、
和人の父、アイヌの母のあいだに生まれた。
遠く長く故郷を離れて、やっと尋ねた。
北の女たちが、そのとき伝えてくれたこと。
2013年6月上旬刊行
定価2,750円(本体2,500円+税)
四六判・並製、224ページ
イラスト:瀧口ユリ子
発行・発売 編集グループSURE
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刊行のごあいさつ
本書の著者、瀧口夕美は1971(昭和46)年、道東の代表的観光地、阿寒湖畔のアイヌ・コタンで生まれました。父は和人、母はアイヌ、家業はみやげ物屋。北海道ブームでにぎわう観光地のまっただなかで、少女へと成長していくことになりました。
「どうして、わたしは、ここにいるの?」──。
ものごころついて以来、この自問はずっと彼女のなかに続いてきたようです。
彼女の母は、その両親を早くに亡くして、道内の十勝地方から移ってきた人でした。
また、彼女の父は、幼時に満洲(中国東北部)で聴覚を失い、本州で成人したのち、彫刻家としての活動場所を求めて、この地に渡ってきた人なのでした。
観光地での商売のためには、身近な誰もがアイヌの民族衣装を身につけて働きます。けれど、日常の自分たちの暮らしに戻ると、誰もそんな格好で生活していない。自分がアイヌだと実感できる材料はひとつも見あたらないのでした。
珍しげに見知らぬ観光客からのぞき込まれたり、学校のコドモ同士ではいじめられたり。自分にとって「アイヌ」でいることは避けようのないことでありながら、はっきりとした像も結んでくれないものなのでした。
「もう純粋なアイヌ人はいないんでしょう?」と問われるたび、「アイヌって、なに?」──という疑問も、たえず自分のなかから湧きました。
わだかまりを残したまま30数年が過ぎていきます。
いまは編集者となって働く東京から阿寒湖畔のアイヌ・コタンに帰省して、あるとき、ついに彼女は切りだしました。
「ママは、どうしてここにいるの?」──。
これをきっかけに、北海道で、サハリンで、人生を重ねた北の女たちが、口ぐちに彼女へと伝えはじめた、それぞれの歴史とは?
2013年 初秋
編集グループSURE(代表・北沢街子)
本書の目次
- まえがき 「今はもう日本人と同じなんでしょう?」
- 第1章 どうしてここにいるの?──母・瀧口ユリ子のこと
- オジジのトゥイタクを聞くまで/北海道旧土人保護法──私の祖先の場合/「同化政策」というけれど/牛のおじさん/見ることと、見られること──おみやげと観光
- 第2章 故郷ではない土地で──ウイルタ・北川アイ子さんのこと
- オタスで暮らしたころ/私は自分をウイルタでも日本人でもなくした/ソ連時代の暮らし/引き揚げる
- 第3章 鏡のむこうがわへ──サハリンの女たち
- 海を渡る/国境があった場所で
- 第4章 鉄砲撃ちの妻──長根喜代野さんのこと
- アイヌ、自分との距離/狩猟と夫婦げんか/お風呂でのトゥイタク
- あとがき 私たちの歴史
- 解説 「違う」と「同じ」のあわいをたどる 山田伸一(北海道開拓記念館学芸員)
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