塩沢由典
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経済に「国」はいらない──ジェイン・ジェイコブズを読む
やがて、彼女は……
──経済活動の基本単位をなすのは「都市」である。「国」単位で経済をとらえようとするのは、まちがいだ──
という論考を展開し、近代以後の経済学に、根本的なとらえなおしを迫る。
そこから生涯で最大の影響を受けた、
経済学者・塩沢由典による、入魂のジェイン・ジェイコブズ連続講義
塩沢由典(しおざわ・よしのり)
経済学者。1943年、長野県生まれ。京都大学大学院理学研究科(数学解析学専攻)修士課程修了、のちに複雑系経済学を提唱。大阪市立大学経済学部教授、中央大学商学部教授を歴任。現在、大阪市立大学名誉教授。
著書に『近代経済学の反省』(日本経済新聞社)、『市場の秩序学 反均衡から複雑系へ』(筑摩書房)、『マルクスの遺産 アルチュセールから複雑系まで』(藤原書店)、『関西経済論』(晃洋書房)、『今よりマシな日本社会をどう作れるか──経済学者の視野から』(編集グループSURE)、『リカード貿易問題の最終解決』(岩波書店)。
共編著に『ジェイン・ジェイコブズの世界』(ムック、藤原書店)。ジェイコブズ『発展する地域 衰退する地域』(ちくま学芸文庫)の巻末に解説を寄せている。
2018年11月中旬刊行
定価2,970円(本体2,700円+税)
四六判・並製、288ページ
発行・発売 編集グループSURE
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塩沢由典『経済に「国」はいらない』刊行のごあいさつ
1950年代後半、ニューヨークの街で進められていた大規模な都市開発に対して、勇気をふるって「ノー」の声を上げる一人の女性が現われました。 ジェイン・ジェイコブズ。──主婦にして、建築ジャーナリスト、市民運動家、そして、やがては経済学、社会学、環境学といった方面にも、論考の翼を果敢に広げていく人物です。 ジェイコブズは、真新しい高速道路と近代建築に置きかえられていく都市像よりも、雑然とはしていても近隣の人間関係に支えられる下町的な環境のほうが、住民の安全にも地域経済にも価値あるものだという観点の持ち主でした。彼女の登場とその所論への共感の広がりは、従来の近代化と大規模開発優先の巨大都市像に、大きな転換をもたらすことになりました。 さらに、1960年代末から彼女が発表する経済学方面の論考は、 ──経済活動のダイナミズムにおいて、基本的な単位をなすのは「都市」である。したがって、従来の経済学のように「国」を単位に経済活動を考えることは、根本的な誤りを犯してきた。── と主張して、近代以後の経済学の根底からのとらえなおしを迫ります。 経済学者の塩沢由典さんは、1980年代後半、こうしたジェイコブズの所論に出会って、「晴天の霹靂」のような衝撃を受け、自身が築いてきた経済観の一からの出直しを求められたといいます。 本書は、塩沢由典さんによる、全3回にわたる圧巻のジェイン・ジェイコブズ講義です。とりあげるジェイコブズの中心的なテキストは、『アメリカ大都市の死と生』(1961年)、『都市の原理』(1969年)、『発展する地域 衰退する地域』(1984年)の3冊。 本書は、塩沢さんの前著『今よりマシな日本社会をどう作れるか』(2013年、編集グループSURE)に続くものでもあります。いわゆる「アベノミクス」のもとで荒廃を深めた日本社会の立ち直りへの契機を、読者のみなさまとともに、ここから模索し、考えていければ、なおのこと幸甚に存じます。
2018年 神無月
編集グループSURE(代表・北沢街子)
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